"Touch The Sky" Kanye West 『Late Registration』

shuh2005-12-12



すっかりすごい人になっちゃいました、カニエモン。
絶賛&ロングセラーの前作「大学中退(和訳)」から一年、アルバム『登録遅延』は、Rolling Stoneの星5つ(ホワイト・ストライプスの『象さん』以来?)、アメリカで初週80万枚のセールスを上げた(今年、同じくらいの初動だったのって、コールドプレイと50セントしか、ぱっと思いつかないんだけど、他にいたっけ?)いまや、ブラック・ミュージックの顔です。マスコットは熊さんの癖に。


その3曲目「Touch the Sky」は、そんなカニエさんの充実感をてらいなく表現した曲。「空にだって、届きそう」。そんなリリックをカーティス・メイフィールドのド名曲「Move on up」の超有名なホーンリフをそのまま拝借するという、聴くもの唖然とさせる大ネタ使いっぷり。


だけど、そんなことも、「今のカニエさんならしかたねーな」と許せてしまえるくらいの高揚感。彼はそれだけ大きな存在になった。(これがやる人がやる人なら、「ファック!セルアウト!」といわれても仕方ないのだけど)


以前も書いたことがあるけれど、カニエは自分のことを「Jay-Zとタリブ・クエリの中間にいる」と表現しているのだけど、このアルバムの中の例えば、「ダイアモンドは永遠に」の中で言及しているような黒人(これはアメリカ内やアフリカまでにも包括しているのだけど)の貧困や拝金主義に対する問題意識を表明するシリアスさや、ロックジャーナリストさえうならせるクリエイティヴィティに対するこだわりがある一方で、「Touch The Sky」のような、自分の成功に対して辺にひねたりしない素直さもある。(ちなみに、収録曲のリリックには、USヒップホップお得意の「ナンパネタ」も多い。まあ、そんなリリックにさえ妙にユーモラスなところがあるのが、この人らしいけれど)


そんなところが、下手にシリアスになれば、「説教臭い」といわれるアメリカのヒップホップの中で、これだけの人気を保ててる理由なんでしょう。


さて、個人的にカニエモン・パワーを見せ付けられたシーンが実はもうひとつありました。


それは、「大学中退」での客演家のソロまでブレイクさせてしまったこと。


一人は「All Falls Down」で、本当はロウリン・ヒルのサンプリングを使いたかったのに、許可が出なかったから代わりに歌ってもらったという曰く付の爆乳ディーバ、シリーナ・ジョンソン


そして、もう一人は、「New Workout Plan」でバイオリンを弾いた、ミリ・ベン・アリ。この人にいたっては、それまでシックなドレスを着て、クロスオーバー系のジャズ・バイオリニストだったのに、へそまで出して「ヒップホップ・バイオリニスト」を名乗るはっちゃけっぷり。


この二人までそこそこ売れてしまうのだから、今のカイエモン景気ってすごいね。


Late Registration
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